『よみがえる天才アルキメデス』正誤表 Ver. 2.00 (May 22, 2007)

アステリスクのついているものは,今回新たに追加したものです.それ以外は2刷で訂正済です.
『よみがえる天才アルキメデス』正誤表Ver 2.00 (2007年5月22日版)
頁;行
4; 下から4* 「というわけです。」の後 (追加)

ところで,実際にこの方法を試してみると,水の表面張力のため,正確な体積の測定は意外に難しいものです.

そこで,アルキメデスが別の方法を取ったという説も有力です.「重さと計量についての歌」(carmen de ponderibus et mensuris)というラテン語の詩によれば,アルキメデスは冠と純金を天秤で釣り合わせておいて,そのまま冠と金を水に漬けたとされています.こうすると,もし冠に銀が混ぜられているならば,つり合いが破れて冠が上に,金が下に動きます.

なぜでしょうか.これはアルキメデスの著作『浮体について』の定理から分かります.この定理は,液体の中に漬けられた物体が,それと等しい体積の液体の重さだけ軽くなることを主張します(浮力の原理).すると銀を混ぜた冠は金よりも比重が小さいので,同じ重さの金より体積が大きくなり,水に漬けたときに余計に軽くなるというわけです.

この詩の出所はあまり明らかでなく,少なくともウィトルーウィウスのような権威ではないのですが,この方法だと直接体積を測るよりもずっと精密な測定ができます.また,アルキメデス自身が証明した浮力の原理を利用する点では魅力的です.体積を測るだけなら天才アルキメデスが風呂から風呂から飛び出すほどの思いつきではないだろう,というわけで,こちらの説を取る人のほうが多いようですが,決着はついていません.読者の皆さんはどうお考えですか?

なお,この問題に関する資料を最も詳しく検討しているのは次の本です.

Dimitris K. Raïos. Archimède, Ménélaos d'Alexandrie et le `carmen de ponderibus et mensuris'. Jannina (Grèce), Université de Jannina, 1989. ISBN 960-233-001-5.

10; 下から4 3角形, (削除) (「他に」と言っている以上,最初にあげた3角形を繰り返すのはおかしいので)
19; 5* エーゲ海方面 デルポイ(下の解説を参照)
34; 8-12 イスラム教・・・少なくありません。 ムハンマド(632没)が創始したイスラーム教は,アラビア語を共通語とする大帝国を生み,とくに8世紀半ばにバグダードに都を定めたアッバース朝では,ギリシアの学術文献が熱心に研究・翻訳されました.アラビア語訳でのみ現代に伝わるギリシアの文献も少なくありません.
70; 4 r26 r62
130; 最後* (参考文献の追加) Netz, R. and Noel, W. The Archimedes Codex: Revealing The Secrets Of The World's Greatest Palimpsest. London: Weidenfeld & Nicolson, 2007.

19ページについての解説:実は,ヘロドトスがデルポイと書いているのを頭の中で勝手にデーロスと読んでいたようです.単純な勘違いです.なお,デルポイにはギリシア各国の財産庫がありました.

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